はさみの歴史

私たちの暮らしの中で、「刃物」は必要不可欠な道具です。

昔から私たちは長年、愛情を持って使い続けた道具には魂が宿ると言われています。

古代の遺跡からは、石を叩く、または擦ることで作り上げた包丁や矢じりなどの石器が数多く出土しています。古代の人たちは手製の刃物を用いて、狩猟や穀物の収穫を行っていました。人間が金属を使うようになったのは、約6000年前のことです。メソポタミア文明、中国の殷・周、インダス文明の人々は銅とスズの合金である青銅で作った道具を使い始めました。

さらに鉄の冶金術が発明され、紀元前1400年頃になると、ヒッタイト人の間で本格的に鉄器が使われるようになります。

青銅より優れた鉄による武器、利器、工具などの普及は、軍の戦力を高め、森林の伐採を容易にし、農村の生産力を増すほか、人々の生活に大きな影響を与えました。

 

普段、当たり前のように使っている「はさみ」も、鉄器の生産が盛んになった紀元前1500年頃に登場したとされる道具です。現存する最古のはさみは、紀元前1000年頃、ギリシアで作られたというはさみで、これは和裁などに使う「握り鋏」と同じ元支点型。

主に羊毛刈りに用いられ、毛織物の毛羽立ちを切るはさみもありましたが、後者は大きなもので1mほどあったそうです。一方、紀元前27年の遺物とされる、帝政ローマ時代の鉄製はさみは、今の「洋ばさみ」と似たような形状でした。刃が短く丈夫に作られており、鉛や針金を切るのに使われたと考えられています。

どちらのはさみも「誰が発明した」という記録は残っていないようです。ただ、はさみの最初の用途は羊の毛を刈りとるためだったといいます。もしかしたら握りばさみを発明したのは、この頃の羊飼いだったのかもしれません。

 

鎌倉幕府の尼将軍・北条政子も使った「握りばさみ」


はさみが中国を通して日本に伝わったのは、6世紀頃だと考えられています。日本最古のはさみは、奈良県の珠城山古墳から出土品した、7世紀頃に作られた「握りはさみ」です。これは古代中国で使われていた、支点の部分が8字形に交わっているはさみと似たタイプで、大陸からの影響を受けたものだといわれています。当時の握りばさみは裁縫に用いられましたが、それは貴族階級のみで、中世までは庶民は裁断に小刀を使っていたと思われます。

なお、鎌倉の鶴岡八幡宮には、源頼朝の正室・北条政子(1157~1225年)所用のはさみが残されています。後白河法皇から頼朝が賜った菊の御紋入りの握りばさみで、このタイプとしては日本最古のものです。形状は今の握りばさみと同じですが、これは化粧道具のひとつとして、髪の毛を切るために使われたものだと考えられます。

この様に今は当たり前に髪を切るのに使われているはさみですがこんなにも古くから使われていたと思うと昔の人の技術と知恵は

計り知れないですね!

一丁で何十年も持つシザーは家宝にもなりうる可能性もありますので大切に使いましょう!